アカデミーで、いつもオレはうつむいていた。この血に流れる衝動を抑えるのに必死で、友達すらまともに作れなかったんだ。
その時、アカデミーに新風が舞い上がった。木ノ葉の三波浪、否。水の六曜と呼ばれる三人組が現れたのだ。
月輪刀のペダル。日輪刀のミソギ。そして三尾のミゾレである。オレはこの三人とは関わりたくなかった。まだボルトにも屍澄真さんにも出会っていなくて、誰もオレの世界に入れたくなかったからだ。特に、三尾のミゾレとは。
休み時間、アカデミーに来たばかりのミソギがクラスの連中に囲われていた。見るからに、良い知らせではないらしい。
髪を鷲掴みにされ、彼女は一切抵抗をしていなかった。
「オイお前らやめろ」
「テメーら切り上げだ!命拾いしたな!」
関わりたくなかったけれど、しょうがない。オレは注意と威嚇だけして、持ち場に戻った。後で生徒たちがぐちぐち何かを言っていた気がするけど、特に気にしないことにした。
「命拾い…?まあいいわ。アンタありがとう!おかげで助かったわ!」
「水の六曜が何だって?名ばかりだったようだな、期待外れだ」
「あんなのホントに名だけよ!だって見てもみなさいよ。アンタと同じ子供だもの」
そう言って優しくほほ笑む彼女からは、大凶の赤口と呼ばれる所以なんて一切読み取れなかった。水の忍が情けないと泣くかもしれないが、それは本当の事だ。
「ミソギ、ホントはお前もっと他に方法があったんじゃないか?」
「えー。ただの子どもの喧嘩でしょ。抵抗したら騒ぎになっちゃうじゃない。駄目よそんなの。それに、私他国の忍だからなおさらね!アンタ名前は?なんか、ミゾレがなんとか言ってたわよ。三尾の磯撫がどうとか」
「オレは枸橘かぐら。・・・三尾はオレの祖父の尾獣だった。オレの祖父は、三尾の人柱力だったんだ」
「そっか!それでアンタやぐらに似てたんだ!」
「オレはやぐらとは違う!!!」
「あ、そこはタブーなんだ」
陽から陰に変わってゆく彼女の表情。美しかったオレンジ色の瞳が冥がった。
「考えているわよ。だって、私うちはマダラ…いえ。うちはオビトだもの」
「誰だ?」
「何も知らないのはアンタの方じゃない?私、木ノ葉の根によりうちはの記憶を埋め込まれた実験体なんだから」
「・・・え」
実験体。彼女は確かにそういった。
「青様の話を知っているのなら、その事も少しは分かるはずだけれど?」
「なんの・・・こと・・・」
こいつは何を言っている?青とかうちはとか、オレが分からない事ばかりだ。それも、木ノ葉にほとんど関わっていることばかりじゃないか。
「ペダル!ミゾレ!六曜の三人がクーデター起こすんでしょ?そろそろ起きなくて大丈夫?」
彼女が声を荒げれば、ペダルやミゾレという少年たちが顔を出した。
「うるっせえな!そいつらを止めるためにオレ達は集められたんだろうが!」
「ぼ、僕だって寝ていたわけじゃありません…!」
「大体お前の方が寝てたんじゃねえのかよ!この平和主義者がっ」
「それが私達の目的でしょ!バカペダル!」
「二人とも…そんなに消されたいですか?」
「ア、 アハ!ごめんってミゾレ!!!」
「そうだぜ怒るなよ!な?」
なんだ?この三人。クーデターとか言った。水の六曜にはほかに彼等と対になる三人のメンバーがいると聞く。
それって危険なことだよな。どう考えても子どもの喧嘩じゃない。
子どもの喧嘩だとしたら、ミソギはまた何もせずに髪を鷲掴みにされる。
オレが注意をしてさって行く連中とは違うだろう。
長十郎様に、話をするか。でも、オレは戦いたくない。戦ったら、きっとまた人を斬りつけたくなる…。
その時、後ろからポンと手を置かれた。それは、暖かい長十郎様の掌だった。
「キミのやりたいようにしてみなさい」
オレの…やりたいこと。
ミソギには多分、あんな表情をしていても膨大なほどの闇が心にある。それはペダルもミゾレも同じだ。だから六曜に数えられているんだ。アカデミーではそれを見せないから他里の者とバカにされているだけなんだ。
「なあ、ペダルのやりたいことってなんだ?」
ペダル今までに見たことのない人柄だったからふと聞いてみたくなった。
「オレは、長十郎様の意志を継ぎ、水の国をうずまきナルトが築いた木ノ葉みたいな里にすることだ!」
「・・・私もそれに賛同してるの。唯一うずまきナルトの少年時代に出会っている磯撫がいるからね」
「僕達の夢は、六曜“赤口”の三人誰か一人が欠けても必ずその夢を実現することなんです」
―――羨ましかったんだ。彼らが。
オレとは違う形で死と隣り合わせなのに、今を輝いて生きている。オレも見習いたいと思った。オレのやりたいようにやる。
それは、一体どういうことかまだ答えは出せていないけどこの人達の助けになりたい。
今は、そう思っている。


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